転生アラサー腐女子はモブですから!?
 最後の白き魔女は、当時のナイトレイ侯爵と血の繋がった兄妹でありながら、恋仲であったのだ。ナイトレイ侯爵家へと養子に出された兄と、リンベル伯爵家の最後の白き魔女となった妹の悲しい恋物語。

 膨大な魔力を有していた彼女は未来を見る力を持っていた。そして彼女は知ってしまったのだ。自分の命と引き換えに全魔力を未来へ転送しなければ魔女の血筋は彼女の時代で滅んでしまうという事を。

 その事をナイトレイ侯爵に告げた時、彼は彼女の命を優先するように言った。しかし、彼女の意思は変わらなかった。彼女もまた魔女の血筋を遺すために生きたリンベル伯爵家の娘だったから。

 最期に、彼女はナイトレイ侯爵との子を産むと、その子をナイトレイ侯爵家に遺し、全魔力を注ぎ転送魔法を発動させ、この世から去った。

 魔法陣の中に立ち、青白い光に包まれキラキラと輝きながら消えていく彼女を見つめていたのは、可愛らしい赤ちゃんを抱いたナイトレイ侯爵だけだった。

 光が消え去った部屋の中からは、慟哭するナイトレイ侯爵の声がいつまでも続いていた。

 最後の『白き魔女』とナイトレイ侯爵との悲恋は何百年にも渡り、ナイトレイ侯爵家の伝承として伝えられてきた。ルイスもまた、子守唄のように何度も聞かされたおとぎ話。

『ナイトレイ侯爵家は最後の白き魔女の魂を取り戻さなければならない』

 魔力を転送した時、最後の白き魔女の魂も一緒に未来へと転送されたと言われている。魔力の器こそが彼女の魂だったのだ。

 ナイトレイ侯爵家は悲恋に泣いた先祖の為にも復活した白き魔女を手に入れなければならない。

『白き魔女』として復活したアイシャを。
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