転生アラサー腐女子はモブですから!?

リンベル伯爵家【ダニエル視点】

「なんですか!? この手紙は!!」

 父から渡された二通の書簡を手に、ダニエルは、腹の奥底から湧き出る怒りに震えていた。

『アイシャ・リンベル伯爵令嬢への婚約を正式に打診する。王家、ナイトレイ侯爵家、ウェスト侯爵家、並びにリンベル伯爵家、四家で交わした(いにしえ)の契約により、アイシャ伯爵令嬢と婚約を結ぶ事が可能な家は、契約を交わした白き魔女の両翼たる侯爵家のみとなる事、お忘れなきよう』

 同様の内容が記された二通の書簡は、全てアイシャへの婚約を打診するものだ。しかし、書簡の文面が問題だった。

(古の契約!? しかも、白き魔女とは、あのお伽話のか?)

 これではまるで、アイシャが白き魔女で、ナイトレイ侯爵家、ウェスト侯爵家のどちらかに嫁ぐことが、昔から決まっていたかのようではないか。

 父や母は『古の契約』なるモノを昔から知っていたのだろうか? だとしたら、今までアイシャへの婚約話を尽く断ってきたのも、この二家の誰かと婚約する事が決まっていたからなのだろうか。

 両親は恋愛結婚推奨派かと思っていたが、違うのかもしれない。

 婚約者候補は、キースとリアム。

 しかし、『古の契約』と書かれている以上、かなり昔に交わされた契約を指しているのではないだろうか? 私やアイシャが生まれるより以前に、もしかすると、父や母が生まれるよりもずっと昔に、四家で交わされた契約を、今さら二家は持ち出して来ているのでは?

 そんな大昔のカビの生えた契約に縛られて、意にそぐわぬ結婚をアイシャが強いられるだなんて、許される事ではない。

 ただ、なぜ今になってそんなカビの生えた契約を二家は持ち出し、アイシャに婚約を迫ろうとしているのだろうか?

 こんな紙切れ一枚の書簡だけでは、二家の思惑が全く分からない。
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