【電子書籍・コミカライズ決定】イケオジ王弟殿下との白い結婚〜君を愛するつもりはないと言われましたが、なぜか旦那様は過保護に溺愛してきます〜
そっと、いつものように私の頭を撫でた手が、そのまま頬に下りてくる。
ようやく明暗の差に慣れてきた目が、ジェラルド様の表情を捉える。
「────つまり、私はこんな美しく着飾った君を誰の目にも触れさせず、独り占めしたかったようだ」
「へ……?」
「テラスの下の庭園を通りすがる人間が、皆、君に見惚れているのを見て、気が気ではなかった」
「えっ、そんなはず」
「……だが、君は知らなくて良い、どれだけ自分が魅力的かなんて」
ジェラルド様が、よそ行きの王弟殿下としての仮面を外して、いつもの優しげな微笑みを見せる。
もちろん、カッコいいよそ行きの表情は本当に素敵でずっと眺めていたい。
でも、どちらか選ぶのなら、断然この表情が良い。
少しだけ緩められたジェラルド様の形の良い口元から紡がれるのは、なぜか私への賛辞だ。
地味な私は、ジェラルド様からどんなふうに見えるのだろう。そんなことをふと思う。
「……怖がらせたくはないから、少しずつ近づくことに決めているのだが」
「……ジェラルド様のことが怖いなんて、あり得ません」
「そうだな。君ならばそう言うだろう。だが、君はまだ何も知らない」
「子ども扱い、しないでください」
「……今日みたいに大人びた美しい姿を前にすると、全部忘れてしまいそうになる」