【電子書籍・コミカライズ決定】イケオジ王弟殿下との白い結婚〜君を愛するつもりはないと言われましたが、なぜか旦那様は過保護に溺愛してきます〜
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そこまで回想して、気が付いたときには、最上階に設けられたテラスにいた。
強い風が吹いて、思わず目を瞑る。
次に目を開いたときには、私の目の前には淡い水色の光を放つ、美しい馬がいた。
それは、初めてジェラルド様にお会いして以降、見かけることがなかったジェラルド様の精霊だ。
「……風の精霊」
ジェラルド様は、そっと精霊を撫でる。
嬉しそうにすり寄る様子は、本当の馬みたいにも見える。
いつもジェラルド様からするハーブの香りが、精霊から漂ってくる。
しばらく、精霊の鼻先を撫でていたジェラルド様は、小さくため息をついた。
「……私が結婚しなかったのは、ただ単にこいつが許してくれる相手がいなかったからだ」
「そ、そうだったのですか」
騎士団長様とのあらぬ噂は、完全な勘違いだったとわかり頬を染める。
そっと降ろされて、あまりに美しく光り輝き、風のように揺らめいている透明な精霊を見つめる。
「きゃ!?」
なぜか、次の瞬間頬を舐められた。
結婚を許さないはずの精霊は、私に対して敵意を向けるどころか、大好きだと告げるみたいにすり寄ってくる。
そういえば、貴族令嬢が近づくことを嫌がっていたらしいのに、私が近づいても大丈夫なのだろうか。
「あの、近づいたら精霊が嫌がるのでは……」
「君は、精霊に愛される加護を持っているだろう? だから、王太子の婚約者に選ばれた」
「確かに、そうですね」
そうでなければ、きっと地味な私なんて選ばれるはずもない。
そんな私の表情に気が付いたのか、ジェラルド様は、私の頭をそっと撫でた。
「精霊は、呼び出した人間に加護を与える代わりに、その人間に執着する。……つまり、私は精霊が愛する君としか結婚できない。だから、君が気に病むことなど一つもない」
「で、でも……。私を愛することはないと」
「……? 私みたいなおじさんが、君を愛すると言ったら、君が好きな人を見つけたときの足かせになるだろう?」
「えっ!?」