a Piece of Cake.
グラスについた水滴が、コースターに落ちる。
「新しい彼女が出来たみたいで」
「え、それ酷くない?」
「酷いですよねえ。でも、わたしはもっと酷くて」
甘い酒をごくり、と飲み込む。
それに気付いた奈緒さんが、わたしの手首を柔く掴もうとした。
「連絡全然返してくれなかったり、会えないって言われたり、携帯見せてくれなかったりすると不安になって、どんどん重くなっていく女なんです。その彼女が出来たのも、彼の携帯見て知りましたし」
えへへ、と笑う。
「本当、別れて正解だったと思います。彼は」
グラスは空になった。