a Piece of Cake.
持っていた木盆の上の鉄板から、熱々のオリーブオイルが飛び出す。
タコやイカやじゃがいもたちがこちらに向かう。アヒージョの良い香り。
わたしのポンコツな反射神経ではそれをキャッチすることも、避けることも出来ず、何とかしようと出した左腕にオリーブオイルがかかっただけだった。
最後に落ちた鉄板が、くわんくわんと床で踊っている。
店の端で起きた事だったので、鉄板の動きが落ち着くと共に、一瞬しんとした店内が再度ざわめき出した。
「申し訳ありません、お客さ」
ホールスタッフが謝りきらないうちに、わたしはへらへらと笑おうとした。