a Piece of Cake.
彼を見た。
「だから、ありがとう」
それをずっと、言いたかった。
言えて良かった。
駅が見える。今日は良い日だったな、とるんるん歩いて行くと、右手を掴まれた。
「名前、教えてください」
振り向くと、言われる。
「首藤です」
「首藤、なにさん」
「依理須、です」
「依理須さん」
復唱され、首を傾げた。
「連絡先教えて」
彼はもう片手でスマホを出して、その画面をこちらに見せた。
自動画面点灯で、待受画面が見えた。
綺麗な海の写真。そこに『ゆうみ』という人から『夕飯どうするの?』とメッセージがきていた。