a Piece of Cake.

彼を見た。

「だから、ありがとう」

それをずっと、言いたかった。

言えて良かった。

駅が見える。今日は良い日だったな、とるんるん歩いて行くと、右手を掴まれた。

「名前、教えてください」

振り向くと、言われる。

「首藤です」
「首藤、なにさん」
「依理須、です」
「依理須さん」

復唱され、首を傾げた。

「連絡先教えて」

彼はもう片手でスマホを出して、その画面をこちらに見せた。

自動画面点灯で、待受画面が見えた。
綺麗な海の写真。そこに『ゆうみ』という人から『夕飯どうするの?』とメッセージがきていた。

< 32 / 135 >

この作品をシェア

pagetop