a Piece of Cake.

一瞬で読めてしまい、ぱっと目を逸らす。

彼女……? いや、奥さん……?

「今日、携帯、わすれました」
「じゃあ渡すので、来店するときに連絡してください」

テンポ良く言われ、彼は名刺のようなものを取り出して、はっと固まった。

「書くもの、あります……?」

恐る恐る聞く様子がなんだか可笑しくて笑った。

「あります、どうぞ」
「……ありがとうございます」
「うん?」
「いや、やっぱりどっかで会ったことあるよなと思って」

顔を覗いて、彼が言った。

「他人の空似だと思う、きっと」

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