a Piece of Cake.
そんなこんなで緊張と億劫が混じり合って、飲みに行く夜になってしまった。
待ち合わせた駅に既に木谷さんは居て、わたしを見つけて手を振っていた。
合コンで少し話しただけなので顔がよく思い出せなかったけれど、本人を見ると合致した。爽やかな営業マンという感じ。
「急に誘ってごめん。予定とか大丈夫だった?」
「あ、それは全然」
へら、と笑ってそれに返す。同期の二人以外に一緒に飲みに行く友人もいないわたし。
「あんまり時間経ってから誘うと、存在が風化しそうな気がして」
「それはすごく、分かります」