a Piece of Cake.

言うと、何とも言えないような顔をして口端だけで笑った。

「……送っていきます」

いつの間にか袋が聡現くんの手に提げられており、カウンターから出てくる。
慌ててそれを止めた。

「いや、いいよ。仕事中でしょ」
「昼取れなかった休憩時間なんで。あ、オーブンの点検、木曜の八時から」
「了解。またのご来店をお待ちしております」

辰己さんは聡現くんを止めようとはせず、わたしに爽やかに言った。

コックコートを脱いだ聡現くんは半袖で、寒くないのか問う。

「厨房暑いんで。でも今も丁度良いくらい」

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