幼馴染みとの契約交際が溺愛必須に変更されました。

 ……なのに、それにいちいち応じている私もどうかと思う。ほぼ毎週のペースで提案される誘いを、この三ヶ月、一度も断っていない。
 倫之の理由はわからないが、私の理由ははっきりしている。誘われて悪い気がしないからだ──もっとはっきり言えば、嬉しいから。
 そんなことを思う自分は、あまりにも意外だった。
 だって、倫之は、ご近所さんの幼なじみ。それだけの関係でしかない。
 ……そういう認識だったはずなのに。


 「由梨、聞いてる?」
 呼びかけられてはっとする。
 その途端に、周囲の声と空気の感覚が戻ってきた。
 ──ここは、最近人気の高いイタリアンレストラン。
 休日は当然ながら予約でいっぱいだけど、倫之が今日の予約を取っていてくれたので、お昼を食べにやって来た。
 朝から美術館の展示を観に行った、その後のこと。
 私が、ある影絵作家の作品に興味を持っているということは、何かのついでにちょっと話しただけだ。なのに倫之はそれを覚えていて、近くの美術館で画業五十周年展が開催されると調べてきて、チケットまで取ってくれた。
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