幼馴染みとの契約交際が溺愛必須に変更されました。
泣き止んでもすぐ家に帰る気にはなれなくて、ひとりで居酒屋に入った。あまり空腹は感じなかったけど、適当に注文してぼそぼそと飲んで食べて、時間をつぶした。
そうして自宅のあるマンションに戻ってきたのは、夜十一時に近い頃。
エレベーターを降りて廊下に出たところで、私の部屋の前に立っている人影に気づき、警戒心が湧き起こる。
こんな時間に誰……?
微動だにしない様子は、普通とは思えなかった。
けれどその影が振り返った瞬間、警戒は解けた──代わりに疑問で頭が占められたけど。
「倫之……?」
数時間前に別れを告げたはずだった。
なのにどうして、ここにいるのだろう──まるで私をずっと待っていたみたいに。
どうしようかと思ったけど、引き返すわけにも、足を前に進めないわけにもいかない。
緊張しながら部屋の前にたどり着く。
「──どうしたの。何か、用事でもあった?」
ああ、と倫之が短く応じる。
「そうなんだ、……ここじゃ迷惑になるから、玄関入って」
躊躇しつつも鍵を回して扉を開いた、その刹那。