幼馴染みとの契約交際が溺愛必須に変更されました。
同じ言葉を返そうとした時、扉がノックされ、開いた。
そろそろお時間です、と女性スタッフが声をかけてくる。
「は、はい」
途端に緊張が舞い戻ってきた。ブーケを握りしめた両手を、大きな手のひらが包んで、ゆっくりと立ち上がらされる。
「深呼吸しとくか」
すうっ、と倫之が空気を吸い込むのに合わせて、私も深く吸った。はーっ、と大きく吐いた息が混ざり合う。
そうしてから見上げると、柔らかく微笑んだ倫之と目が合った。不思議なもので、完全にとは言えないまでも、緊張が六割ぐらいは減った気分になる。
「さ、行こう。皆待ってる」
ブーケを持つ側と逆の手を取り、倫之が歩き出す。ドレスの裾に気をつけながら、私も足を進めた。
……チャペルに続く両開きの扉の前で待ちながら、心の中でこれまでの出来事を、そしてこれからの未来を思った。
今に続く道を歩いてこられたことへの感謝と、この先も幸せが続くようにとの希望。それらを胸に、私は新しい日々に踏み出す。誰より愛している人と、お腹の子供と一緒に。
結婚行進曲が鳴り響き、同時にスタッフによって、扉が開かれた。拍手と参列客の視線が注がれる。
白いバージンロードを、父の腕に手を添えながら、一歩一歩確認するように踏みしめて歩いていく。道の行き止まり、主祭壇の前に立つ、倫之に向かって。
- 終 -


