「急募:俺と結婚してください」の手持ち看板を掲げ困っていた勇者様と結婚することになったら、誰よりも溺愛されることになりました。
「そうかもね……フィオナは、これで納得出来る?」

 シリルに静かに問われて、私は自分がどうしたいのかわからなくなった。

「あの人には嫌なことをされて、その時には本当に嫌でしたけど……彼自身については、もう何も。何の感情もありません。どこかで、未来に幸せになれると良いと思います。私が今、幸せだから」

「そっか。そうだよね……」

 国外追放されたエミリオ・ヴェルデについては、もう顔を合わすことも話すこともないだろう。

 だから、私には関係ないことだし、彼が望むような人生が送れば良いと思う。

 そして、私はロッソ邸に来た時から無言だったライリーさんが、なぜか私をじっと見つめていることに、その時に気がついた。

 私もそんなライリーさんのと金色の目と視線を合わせたけど、何かしら。彼は何かを言いたがっている……?

「あれ? フィオナ。ライリーみたいな顔が好きなの?」

 何か用があるのだろうかと、ライリーさんを見ていた私に、不意にルーンさんが質問してきたので、咄嗟に本人を目の前にして思ったままに答えた。

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