「急募:俺と結婚してください」の手持ち看板を掲げ困っていた勇者様と結婚することになったら、誰よりも溺愛されることになりました。
 シリルは元々庶民の勇者なのだし、その辺りの貴族の常識が欠けていたとしても、何の不思議もないと思っていたからだ。

 私がそう思って戸惑っていることが伝わったのか、シリルは安心させるように言葉を重ねた。

「新婚の妻が一人で夜会になどに行けば、これは良い機会だと良からぬ奴が寄ってくるとも限らないから。俺が心配なんだよ。一緒に行こう」

「……そんな、私になんて」

 いつもジャスティナの引き立て役だった自覚のある私に、声を掛けて来る人なんて居るはずもないのに。

 シリルは、何も知らないから。

「……? フィオナは、自分がわかっていない。新婚早々に美しい妻を一人切りにする夫と結婚したと思われれば、火遊びにちょうど良い相手だと良からぬ輩はそう思うだろう」

 そんな新婚早々の夫とは、何もない偽装結婚で白い結婚のままで終わってしまうはずだもの。何の問題もないのではないかしら。

「……シリルは、嫌ではないですか?」

< 27 / 192 >

この作品をシェア

pagetop