「急募:俺と結婚してください」の手持ち看板を掲げ困っていた勇者様と結婚することになったら、誰よりも溺愛されることになりました。

05 聖女

「……フィオナ。あれは、勇者シリル・ロッソでしょう? 貴女が特例を受けてとある高位貴族と既に結婚したと聞いていたけど、もしかして……その」

 ジャスティナは私がシリルと結婚したとはわかりつつ、私の口からそれを確認したいようだった。それはそうだろう。

 きっと、信じられないに違いない。

 自分よりずっとずっと後に結婚すると思っていた私が、こうして先に結婚し、しかもその相手が勇者で公爵位だって持っているもの。

「……ええ。そうなの。本当に急に決まったことだから……知らせてなくてごめんなさい」

 シリルには私と元々恋仲だったが、色々あってこの時に結婚することにしたことにしようとは言われていた。

 私たちは出会って交際初日に結婚を決めたことになるんだけど、聖女ベアトリスから逃げる言い訳でしたなんて誰かに説明する時に絶対に言えない。

 彼が急募していた結婚相手に私が応募したと真実を話しても、鼻で笑われてしまいそうだけど。

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