「急募:俺と結婚してください」の手持ち看板を掲げ困っていた勇者様と結婚することになったら、誰よりも溺愛されることになりました。
 けれど、親友のジャスティナに、嘘をつくことはためらわれた。だって、彼女は本当に姿もそうだけど、心まで美しい人だもの。

 裏切りたくは、なかった。

「まあ……そうなの。けれど、羨ましいわ。実は私、偶然城で勇者シリル様をお見かけしたことがあって……それからずっと、彼のファンだったの。だけど、貴女も色々事情があって、隠していたんでしょう?」

「えっ……ええ。そうなの。もしかして、ジャスティナは、シリルのことを前から知っていたの?」

 私は恥じらいながら頬を染めて話すジャスティナに、驚きを隠せなかった。だって、私はエミリオ様に憧れていると彼女に伝えた時も、彼女は「今は誰も男性としては気になっていない」と言っていたのに。

「呼び捨てなのね……いいえ。そうよね。貴女は彼の妻なのだから、名前を呼び捨てだって、当たり前だわ。良いわね。本当にシリル様は、素敵ですもの」

 本当に心から羨ましそうに語るジャスティナを見て、私は心の中にもやもやした感情が湧き上がるのを止められなかった。

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