「急募:俺と結婚してください」の手持ち看板を掲げ困っていた勇者様と結婚することになったら、誰よりも溺愛されることになりました。
 貴女とエミリオ様が、人目につかないように隠れて楽しそうに話している時に私が感じたくらいには……ショックを受けてくれたかしら?

「……フィオナ? こちらは?」

 私の頭の上から不意に声がして、ハッと上を向けばすぐ近くにシリルの整った顔があったので、慌ててその場から体を引こうとした。

「きゃっ」

「危ない。気をつけて」

 突然の動きについていけなかった高いヒールによろけそうになった私を、シリルは体を寄せてこともなげに支えてくれた。

 彼の体の熱を感じて、私の顔にはカアっと熱が集まった。

「ありがとう。シリル」

「どういたしまして。はい。冷たい飲み物」

 順番通りに役目を果たしていくようなシリルは、私に冷たい果実水が入ったグラスを渡してくれた。

「ごめんなさい。慌ててびっくりしてしまって。シリル……こちらは、私の幼馴染みで親友のジャスティナ・エリュトルンよ」

 何気なくシリルはジャスティナへと目を移し、私の想像では彼は美しい彼女を見て驚くのではないかと思っていた。

 ジャスティナを初めて見た男性は、大抵そうするから。

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