「急募:俺と結婚してください」の手持ち看板を掲げ困っていた勇者様と結婚することになったら、誰よりも溺愛されることになりました。
「いや、こっちもごめんね。謝ることはないよ。俺たちはまだ出会って間もないし……すぐに信用をしてくれなんて、虫の良い話だった。ゆっくりわかり合っていこう」

 シリルは、とても良い仮の夫だ。それは、私だってわかっていた。

 けれど、近い将来彼に捨てられることがわかっていながら、心を開くのは難しい。

 だって、私はピンチにあった彼を救うための相手に、ちょうど良かっただけで、気に入られて求婚された訳でも……何でもないんだもの。
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