「急募:俺と結婚してください」の手持ち看板を掲げ困っていた勇者様と結婚することになったら、誰よりも溺愛されることになりました。
 だから、二人が楽しそうに隠れて笑っているのを見て、ジャスティナとエミリオ様は親密になったのだと判断した。ジャスティナは用心深くて今まで、異性とそんな風に居たことはなかったからだ。

 けれど、彼女にとって友人の私の話をしていたのだと思えば、確かに話は通る。二人ともお互いに気がないとわかっているので、逆に意識せずに親しく話せたということも。

 ジャスティナはもっと私に早く言えば良かったと謝罪してくれたけど、私はもう自分の気持ちがよく分からなくなった。

 こんなに大事にしてくれるシリルと別れてまで、エミリオ様と婚約を前提に交際したいかと問われた時に言葉に詰まった。

 私とシリルは期間限定の夫婦で、いずれ別れてしまう。けれど、そもそもの元凶のベアトリス様が本当にシリルを諦めたのかは、まだ確定していない。

 真剣な顔つきのジャスティナは、これら全てを知った上でシリルと一度話したいと言った。もしかしたら、私ではなく自分を結婚相手に選べと、交渉するのかもしれない。

 確かにジャスティナなら、名誉ある勇者の結婚相手として相応しい。女性として必要なもの、何もかもを持っている伯爵令嬢だ。

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