冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~
 ここでも……と、途中からの彼の言葉がほとんど聞こえていなかったほど、私はショックを受けてしまっていた。それはさんざん私に取り入ろうとしてきた貴族たちの笑顔と、なんら変わらなかった。

 そして彼の宣言通り、入学後、私は当然のように生徒会役員として担ぎ上げられ、一年の後期には次期生徒会長として内定しました。校長からの強い働きかけがあったことは間違いない……。

 辞退することも考えましたが……虚しいことに学生たちはその事に異を唱える様子もなく、無関心で受け入れてしまった。この場所ですらひとりとして、仲間たちが実りある学生生活を送るため、心を砕こうとする人物は現れてくれなかったのです。

 いや、改めて強く思い知らされた気分でした……。
 幼い頃に抱いていた騎士像――己の信念を貫き、不正を(ただ)し、救いなき人々に手を差し伸べる……そんなものは幻想でしかないのだとね。
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