冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~
同時に、今まで自分の意志で歩んできたはずのこの道のりは、全て線でも引かれたように定められていたものだったと知りました。私の行動や努力いかんにかかわらず、生まれた時からすべては決まり……候爵家の――名家の嫡男で元騎士団長の息子であるという事実が、これからもずっと自動的にその足を目的地まで運ばせる。
『――騎士とは、お前の思っているようなものではない』
今更ながら、父の言葉の意味をはっきりと理解した私は、自室に戻るとあまりの寒々しさに膝を突き、体を抱えてうずくまりました。
人格も能力も置き去りにし、ただそこに在ることだけを求められる。父はこのような気持ちのまま、ずっと何十年も騎士としてその身を晒し、耐えているのかと思うと、私の身体からは絶えず冷や汗が浮かび、ひどい動悸が胸を襲った。
(私にそれが、務まるのか? いっそ、こんな家など捨ててしまえば……)
「キース……どうしたの!? 誰か……!」
『――騎士とは、お前の思っているようなものではない』
今更ながら、父の言葉の意味をはっきりと理解した私は、自室に戻るとあまりの寒々しさに膝を突き、体を抱えてうずくまりました。
人格も能力も置き去りにし、ただそこに在ることだけを求められる。父はこのような気持ちのまま、ずっと何十年も騎士としてその身を晒し、耐えているのかと思うと、私の身体からは絶えず冷や汗が浮かび、ひどい動悸が胸を襲った。
(私にそれが、務まるのか? いっそ、こんな家など捨ててしまえば……)
「キース……どうしたの!? 誰か……!」