冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~
「うぅっ……も、もう一度だけ」
「私にはあまり時間が無いのですが?」
「お願いします!」
「やれやれ……」

 彼の剣幕に負け、数度魔法込みの模擬剣術試合を行いました。ただ愚直なだけではなく、つたなさを補おうとする工夫は見られ、見どころはあったものの……当然同じことの繰り返しとなりました。

 完膚なきまでに叩きのめしてその日は別れることとなりましたが、翌日からも彼は執拗に私に挑んできた。私もただ惰性で日常的な訓練を送るよりかは、有望な若者の成長を見ている方がまだましな気分だったのでしょう。いつ諦めるのかとぞんざいにあしらいながら、なんだかんだでしばらく付き合ってやりました。

 ある時彼がなぜ、そうまでして強くあらんとするのかが気になった私は、自分の口の上手さと、生徒会役員に加えるという餌を利用して半ば強引にそれを吐かせましたが……理由は、感情を半ば封じ込めていた私ですら、しばし言葉を失くしてしまうほど重たいものでした。
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