冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~
 あまりに激務が続き過ぎており、彼らについては新婚夫婦の関係性を保てているのか危ぶむ声も多かったが、それは杞憂のようで、ガレイタムでは先んじてレミュール王妃から、そしてファーリスデルでもフレア王妃から第一子が誕生したらしく、王都周辺では未だめでたい雰囲気に溢れ……教会に結婚を申し込む恋人たちも多く、国内は非常に明るい雰囲気に包まれている。

(この先、ずっとこんな平和が続くといいんだがな……)

 リュアンは、たまにしか会えない妻に小言を言われるジェラルドの姿を想像して苦笑しながら、内容を確認しサインをしてゆく。

 その机の上には、いつもひとつの髪留めが置いてある。それはいつも丁寧に磨かれ、彼の表情を映していた。それを目にする度に、彼は指を添え、心の中で語りかけている。

(セシリー、元気にしてるか? ゆっくりでもいい。いつかまた戻って来てくれ。会わせたい人、話したいこと、いっぱいあるから……)

 ほのかに輝く宝石の表面に、少しだけ温もりを感じた気がして彼は目を開けたが、変化はない。気のせいだと思ってふっと笑い、羽根ペンを動かす作業に戻る。
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