冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~
 満足した顔で敬礼をし、後ろに遠ざかるキースにふたりは「ありがとう!」と叫んだ。キースはいつだってリュアンの無茶を聞いてくれた。そんなもうひとりの兄のような彼がいてくれたから、リュアンは何事にもいつだって全力で立ち向かってこれたのだ。たまに苦々しく思う時はあっても、彼と出会わせてくれた幸運は神に感謝するほかない。

 ――ゴーン、ゴーン、ゴーン……。

 小さくなる彼の背後にそびえていた時計塔が三回、大きな鐘を鳴らし、祝福を告げるような音色にセシリーは目を細める。するとリュアンはこう教えてくれた。

「あの鐘、もしかしたらお前の友達が鳴らしてくれているのかもしれないぞ?」
「えっ?」

 ティシエルは、友人であるセシリーがいなくなったことと、魔道具作成師としての将来が絶たれたという二重の苦境に一時期相当に沈み込んだようだ。だが彼女はまた立ち直ると、新しい道を進むために今回の件で知り合った時計技師に弟子入りしたらしく……今はまだ魔力を供給されて動いている時計塔を、やがては工学の力のみで動かせるように作り直し、国の象徴として保存していくというのを当面の目標に掲げているそうな。
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