冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~
「これって……」

 すると露わになったのは、柔らかなブルーの光を帯びる、小さな月長石が乗ったプラチナの指輪だった。滑らかに波打つような優美なデザインは、月の光を受け入れて美しく輝いており、なによりも嬉しいのは裏側の刻印に『最愛の人 セシリーへ』と彫られていたこと。

 リュアンは頬を掻きながら、恥ずかしそうに俯く。

「……俺が作ってみたんだ。も、もし気に入ってもらえなかったら、その……何度でも作り直す――」
「嫌っ! これはもう私のだもの! 何言われたって絶対に返しませんっ!」

 そんなことを許すものかと、セシリーはそれをバッと胸に抱いて庇う。これは彼女にとってたったひとつの、世界で最高の宝物だ。たとえ天変地異が起ころうとも絶対に手放すまいと心に決める。その反応を受けて、リュアンは職人冥利に尽きるというように晴れ晴れしい笑顔を見せた。

「そんなに気に入ってくれたんだな……なら、付けさせてくれるよな」
「え、ええ」
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