冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~
 リュアンが肩を抱いてくれて、優しい体温に包まれながら付けてもらった指輪をセシリーは空へと翳す。――お月さまがふたつになった。そんな感想をセシリーは抱く。

 なんとはなしにセシリーの口からこんな言葉が零れた。

「私ね……願いが叶ったんだ」
「どんなこと?」
「たいしたことじゃないの……。でも、ずっと思ってた。こんなちっぽけで、なんにも出来ない私を必要としてくれる人なんて、ただのひとりもいない。こんな自分のままじゃ、幸せになれないって……いつもそんなことばかりを」

 自分が自分でなかったらと、何度思っただろう。もっと強く美しく、人に価値を認めてもらえる存在であったなら、どれだけ幸せなのだろうと……。幸せになりたいという望みはあるのに、踏み出すのが怖くて胸の奥に仕舞い込み、何もせずに無理だと諦めていた。

 そんな想いに言葉を詰まらせながらも、セシリーは自分の中に生まれた変化を少しずつ言葉にして紡いでゆく。
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