□TRIFLE□編集者は恋をする□
 

「なにへこんでんだよ」

乱暴に後頭部を殴られて驚いて顔を上げると、背の高い男が私を見下ろしていた。

「イタイよ。片桐」

「あんまり新人をいびるなよって編集長が言ってたぞ。お前のせいで若い社員がすぐやめるって」

「……編集長むかつく」

編集長はさっきのデガワと私のやり取りを見てたんだろう。

そうやって新人がすぐ退職願を持ってくるのを私のせいにするけれど、
ほとんどは仕事の過酷さと編集長の暴言に耐え切れなくなったのが理由なのに。

机に肘をついて今は留守中の編集長のデスクを睨んでいると、片桐にもう一度雑誌で後頭部を小突かれた。

片桐はその辺から椅子を引っ張って来て私の隣に座り、デスクの上に手にしていた雑誌を広げる。

「で、次号の特集どうする?」

開かれたのは、去年やったラーメン特集のページ。

スイッチを仕事モードに切り替えながら、顔にかかる自分の肩下までの髪をきゅっとゴムで縛り背筋を伸ばした。
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