□TRIFLE□編集者は恋をする□
「入院なんて、どうしたの?」
「転んで足を骨折しちゃったのさ」
おばちゃんはシーツをめくって大きなギプスで固定された足を見せた。
「転んだくらいで骨折なんてねぇ。私も歳だねぇ」
ギプスのせいで自由に動かせない足を、忌々しそうに見て鼻にシワをよせる。
「骨折かぁ。痛かったでしょ。気を付けなきゃだめだよ」
表情は元気そうだけど、こうやって病院のベッドで入院着を着て寝ていると、小柄なおばちゃんがさらに小さく感じる。
いつも綺麗に切りそろえていた短い髪が伸びかけているのも、頼りなく感じる一因なのかもしれない。
「入院は長くなりそうなの?」
「ギプスが取れるまであと一か月は入院だってさ」
「早く元気になって退院してくれないと、おばちゃんの料理食べられなくて飢えちゃうよ」
甘えた事を言っていると、おばちゃんが病室の入口の方を見て首を傾げた。
「そういえば、さっき誰かと二人でいなかった?」