□TRIFLE□編集者は恋をする□
地下鉄のホームにすべるように入って来た車両に乗り込む。
開いている席に少し間を空けて並んで座り、ぼんやりと向かい側の窓を眺める。
しばらくして「あっ」と三浦くんが声をあげた。
三浦くんの視線の先を見ると、反対側の座席に見覚えのある女の人がいた。
「美咲さん……」
思わずその人の名前を口にする。
名前を呼ばれた美咲さんは驚いたように顔を上げこちらを見た。
「あ……、平井さん」
視線を合わせた私たちは、お互いに気まずい顔をしていたと思う。
会いたくない人に会っちゃったな、という微妙な空気が漂う。
「偶然ですねー。美咲さんはこの辺に住んでるんですか?」
そんな空気を打破するように三浦くんは明るく話しかける。