□TRIFLE□編集者は恋をする□



 

看護師さんに借りてきた掃除機で床を掃除しながら、美咲さんに声をかけた。

「美咲さんって、美容師やめてどれくらいになるんですか?」

「もう一年以上かな」

「それからずっと働かずに家事手伝いをしてるんですか?」

「いいでしょ別に」

「美容師に復帰すればいいのに」

「いやよ。私この仕事好きじゃないし」

「また、そういう嘘をつく」

私が言うと、美咲さんは不機嫌そうにこちらを睨んだ。

「何よ、嘘って」

「だって、おばちゃんの髪を切ってる時も、女の子の前髪を切ってる時も、すごく楽しそうでしたよ美咲さん」

私の言葉に美咲さんが視線をそらす。

「本当は好きなんですよね?美容師の仕事。どうして辞めちゃったんですか?」

「美容室なんて女ばかりの職場で、理想だけじゃやっていけないのよ」

今まで黙って私の話を聞いていた美咲さんは、下を向いたままぽつりと言った。

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