□TRIFLE□編集者は恋をする□
 

はぁー。
片桐はずるい。
どうしていつもこんなに私の事をドキドキさせるんだ。

そう思いながら、雑念を振り払うようにキーボードを叩く。
すると、目の前にことんと何かが置かれた。

「差し入れでーす」

小さなプラスチックケースに入った可愛らしいカップケーキ。

「白桃のトライフルです」

カップの中にスポンジやクリーム、淡いピンク色の桃のムース、シロップ漬けにされた角切りの白桃、その上にぽんと置かれたミントの葉。
色々な食材が綺麗な層をつくって、とても涼しげで美味しそうだ。

「うわ、ありがとう。すごく美味しそう」

そう言って顔を上げると、三浦くんが爽やかな顔で笑っていた。

「なんだかいい感じですね」

「いい感じって、何が?」

「片桐さんと平井さん」

三浦くんはそう言って、今は取材で不在の片桐のデスクに視線をやってにやりと笑う。

「いい感じもなにも、もうフラれたから」

「え!」

トライフルと一緒に置かれたプラスチックのスプーンのビニールを破りながらそう言うと、三浦くんは驚いたように大声を出した。
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