□TRIFLE□編集者は恋をする□


「もう片桐さんにフラれたなら、遠慮せずに平井さんの事口説けますね」

「また、そういう冗談やめてってば」

「冗談じゃないですよ。俺、本気で平井さんの事が好きです」

「え……?」

突然低くなった三浦くんの声に驚いて顔を上げると、彼は真剣な表情で私を見ていた。

「またぁ……」と、笑って誤魔化そうとしたけれど、キーボードに置いていた私の手に三浦くんの細い指がなぞるように触れて、その指先の熱さに言葉に詰まった。

ゆっくりと私の手を握ったかすかに汗ばんだ熱い手。
なんだかその体温の高さが、そのまま彼の真剣さを表しているようで、笑って誤魔化すなんてできずに、ただ三浦くんの顔を見上げる。

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