□TRIFLE□編集者は恋をする□
 

どういう事?
不思議に思って首を傾げると、片桐はファインダーを覗いたままシャッターを切る。

「お前に仕事に熱中して前向きに突き進む姿を見せつけられたせいで、過去にこだわってうじうじしてる自分がバカバカしくなったって」

「なにそれ、褒められてる気がしないんだけど」

本当に美咲さんは口が悪いんだからと苦笑いをする。

「あいつ、今まで本当にハサミを持てなかったんだよ」

「え?やっぱりケガをしてたの?」

「ケガじゃなくて。精神的に」

「精神的に……?」

もしかしたらあの時、私は無理やり美咲さんにハサミを握らせて髪を切らせてしまったんじゃないかと不安になる。

「美咲が前にいた美容室で同僚とうまくいかなくなってたのは知ってるか?」

「うん。それは聞いた」

「じゃあ店の客に付きまとわれてたのは?」

「え、それは知らない。美咲さんは自分がお客さんと浮気をして、お店の人にバレてクビになったって言ってたけど……」

私がそう言うと、片桐は困ったように苦笑した。

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