□TRIFLE□編集者は恋をする□
「平井。何か喋って」
ファインダーをのぞいたままで片桐がそんな勝手な事を言う。
慣れないドレスを着せられて片桐にカメラを向けられた私は、ものすごく緊張してるっていうのに。
「何かって言われても困るよ。片桐が喋って」
私が膨れっ面をすると、片桐は小さく息を吐いて笑った。
「いいよ。じゃあ美咲の話でもするか」
この状況で、よりによって美咲さんの話ですか。
ずきんと胸が苦しくなる。
正直、片桐の口から彼女の名前を聞くだけで辛かった。
でも、そんな事素直に言えるわけがないから、私はただ黙ってうなずいた。
「美咲、仕事をはじめる事にしたって」
「へぇ……、なんの仕事?」
「医療施設への訪問美容」
「本当!?また美容師のお仕事する気になったんだ!」
あんなに楽しそうに人の髪を切っていた美咲さんが、美容師辞めているのはもったいないと思っていたから、うれしくて自然と笑顔になった。
「まぁ、半分ボランティアみたいなものらしいけどな」
「でも、美咲さんにはあってると思う。たまに口は悪いけどすごく優しいから、病院の患者さんたちもきっと喜ぶよ」
「平井のお陰だって、礼を言ってた」
「私のお陰……?」