□TRIFLE□編集者は恋をする□
すこしでもやり返してやりたくて、覆いかぶさる男の脇腹に手を伸ばしてくすぐってやろうとしたけれど、その手はすぐに掴まえられて、ベッドの上に縫いとめられた。
そして、自由を奪われた私の体をじっくりと見下ろすと、獣が獲物に向かってゆっくりと歯をむくように、私の鎖骨のあたりに噛みついた。
「んん……っ!!!」
思わず悲鳴のような声が漏れた。
鎖骨のふくらみの上を、その下の窪みを、ゆっくりと片桐の舌が這う。
その動きに合わせて移動した彼の唇が、ちょうど私の胸の先端をかすめた。
「やッ……」
思わずびくりと体が跳ねる。
勝手に反る背中と浮く腰が恥ずかしくて、誤魔化すようにジタバタと足を動かすけれど、簡単に片桐に押さえつけられた。
そして敏感になった私の体をじっくりと愛撫していく。
セックスって、こんなに生々しくて淫らな行為だったっけ……?
何年も前の事だけど、一応いちいち数えてられない程度には、セックスをしていたはずなのに。
片桐から与えられる刺激は、そんな記憶を忘れさせるくらい激しく私を揺さぶった。
世界中の男女が、夜毎ベッドの上でこんな行為を繰り返してるなんて。
そして朝になれば何事もなかったような涼しい顔で、日常を送っているなんて。
とても信じられない。
私に覆いかぶさる筋肉質の逞しい身体がうっすらと汗ばんでる。
いつもは無愛想で無口な彼が、私の事を熱を帯びた目で見下ろしてる。
奥二重の切れ長の目と、男らしい鼻筋。
きゅっと結んだ口から、時折吐き出される熱い吐息。
私の両足を肩の上に担ぎ上げ、ゆっくりと中に入ってくる。
玄関での行為の強引さが嘘のような、私の反応を窺いながらのその行為に、思わず身体が疼いた。
きゅっと締め付けた私の中に、片桐が小さく眉をひそめる。
その生々しい男の色っぽさに、眩暈がした。