そして消えゆく君の声
「…………」


 その、宝物でも見つけたような弾んだ声を聞いた時、なにか柔らかい風のようなものが、つま先から頭へと吹き抜けた。

 名前も知らない相手の言葉に、どうしようもない嬉しさと気恥ずかしさを覚えて、つい口ごもっていまう。


「……そう、だと思う」

「いいな、私一人っ子だから」


 お姉ちゃんがほしかったんだよねと言いながら、ポケットの中をごそごそする小さな手。やがてつまみ上げたのは、指先ほどの大きさの飴玉だった。


「これあげるから元気出して」


 夕日を透かして、空の色のように輝く薄紫の飴。

 期待に満ちた瞳に促されて口に運ぶと、舌の上に優しい甘みが広がった。その反応にますます笑みが深められて、いよいよ耐えがたくなった照れくささをごまかすために、錆びた遊具を眺めるふりをする。


 飴玉を舐め終わるまでの間に交わした会話は季節や学校にまつわる何でもないもので、なのに終わるのが名残惜しかった。
 
< 398 / 401 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop