エリート御曹司はママになった初恋妻に最愛を注ぎ続ける

 瑛貴さんはれっきとした胡桃の父親だが、彼も胡桃もそれを知らない。この先も知らせないまま、別々の人生を歩むのか……。それとも、違った未来があるのか。

 悶々と考えながら駅までの道を歩いていると、後ろから近付いてきた軽トラックがプッとクラクションを鳴らした。

 ちゃんと端を歩いていたつもりなので怪訝な顔で振り返ると、運転席の窓から手を振ったのは作業着姿の麻人さんだった。

 文句を言われたわけではないとわかり、肩の力が抜ける。

 私の真横にぴたりと軽トラックを止めた彼は、運転席からジッとこちらを見下ろした。

「ずいぶん綺麗な格好してるな。友達と会うの?」
「あっ、いえ……その」
「もしかして、アイツに会うの?」

 正直に説明したら、麻人さんを怒らせるかもしれない。そう思うと口ごもってしまい、逆にわかりやすい態度になってしまった。

 顔を強張らせる私を見て、麻人さんがため息をつく。

「どこまで行くんだ? もしかして東京とか?」

 不機嫌そうに顔をしかめる麻人さん。彼の中では、瑛貴さんが完全に悪者なのだろう。

「いえ、静岡駅までです……」
「だったら送ってく。電車に乗るより楽だろ」
「とんでもない、大丈夫ですよ。それに麻人さんお仕事中じゃ……」

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