エリート御曹司はママになった初恋妻に最愛を注ぎ続ける
すれ違っていた理由

 瑛貴さんと会うことになったのは、翌週の土曜。最寄りの駅から電車に乗り、静岡駅に近いホテルのイタリアンレストランでランチをする約束だ。

 胡桃を産んでからファッションはパンツスタイルばかりになっていたけれど、白のシンプルなニットアンサンブルにブラウンのシフォンスカートを合わせ、久々にスニーカーでなくパンプスを履いた。

 抱っこした時に胡桃が引っ張ってしまうのですっかり着ける習慣がなくなっていたアクセサリー類も小物入れから引っ張り出し、華奢なゴールドのチェーンがニットの上でキラキラ光るネックレスと、耳に小ぶりなパールイヤリングをつけた。

 こんなにしっかりお洒落をするのは、妊娠前以来。自分が自分でないみたいで、やけに恥ずかしい。

「胡桃ちゃん、ママに行ってらっしゃいしようか」
「ママ、いってあっしゃい」
「行ってきます。すみませんが叔母さん、よろしくお願いします。遅くならないようにしますので」

 家を出たのは午前十一時過ぎ。なにも知らない胡桃が玄関先で無邪気に手を振る姿を見て、複雑な気持ちになる。

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