エリート御曹司はママになった初恋妻に最愛を注ぎ続ける
「部屋の中でかすかな物音がしていたから、きみが朝の身支度でも整えていると思って、俺はのんきにベッドの中で微睡んでいたんだ。でも、しばらく経ってから思いつめたようなきみの声が聞こえた。『再会なんてしなければよかった』――と」
言われてみれば、そんなことを言ったかもしれない。フィンランドで再会しなければ、幼い頃の初恋の記憶をきれいなまま残しておけた。
なのに、彼に縁談があると知りながらその手に抱かれることを選んだ、弱くてずるい自分を知ってしまったのがつらかったのだ。
だけど瑛貴さんは、私のセリフを聞いて自分が拒絶されたように思えてしまったようだ。
じゃあ私たち、本当は想い合っていたの……?
「幻滅なんて……むしろ、その逆です。別れが決まっているのにこれ以上好きになるのは苦しい。こうなるなら再会しなければよかった。そういう心境だったと思います」
「そうか。やはり俺は思い違いをしていたようだな。今さら後悔しても遅いが、ひとつだけ言い訳をさせてもらえるか?」
悔やむように眉根を寄せた後、瑛貴さんはそう言って前髪をかき上げた。