エリート御曹司はママになった初恋妻に最愛を注ぎ続ける
「なぜそれを?」
「ごめんなさい、瑛貴さんがシャワーを浴びている時にスマホが光ったので、メッセージの一部が見えてしまったんです。それで、あなたにお見合いの予定があると知りました」
当時を思い出すと、やはり今でも胸が締めつけられる。身分差を忘れて舞い上がっていた気持ちが、あのメッセージで一気に落ち込んだ。
「そうだったのか……」
「だから、私を誘ったのも軽い気持ちなんだろうなと……。私が一度逃げようとしたのも、そして翌朝実際に逃げたのも、あなたには他に相応しい女性がいると思ったからです」
テーブルに、沈黙が落ちる。ちょうどその時ウエイターがやってきて、プロシュートやチーズ、トマトを始めとした色とりどりの野菜を使ったアンティパストの盛り合わせを私たちのテーブルに置いた。
しかしこの話が着地するまで、手をつける気にはなれない。
「と、いうことは……きみが去り際に放った言葉は、俺を嫌いになったとか、幻滅したとか、そういう意味ではないのか?」
「去り際って……あの時、瑛貴さんは眠っていたんじゃ?」
なにか言った気もするが、自分の心を守るのに精いっぱいで、覚えていない。