エリート御曹司はママになった初恋妻に最愛を注ぎ続ける
「お、お断りします。名前も素性もわからない方の誘いに乗るわけにはいきません」
本気で譲ってくれる気があるなら、今そうしてくれるはずだもの。もしかしたら彼は、甘いマスクを武器にひとり旅の女性を狙う危険な人物なのかもしれない。
「ああ、そういえば教えていなかったか。ちょっと待って」
シャツの胸ポケットを探った彼が取り出したのは、革の名刺入れ。そこから名刺を一枚取り出した彼は、私の前にスッと差し出した。
【株式会社紫藤インテリア 代表取締役社長 紫藤瑛貴】
紫藤インテリアってあの、涼帆が勤めている?
ということは、あの眼鏡の秘書さんが涼帆の彼氏だったんだ。知っていればご挨拶したのに……。なんて、後悔してる場合じゃない。
目の前には、紫藤インテリアという大企業のトップが立っているのだ。私、そんなすごい人に対して色々と失礼な想像をしてしまった。
先ほどの非礼をお詫びしようと思いかけ、ふと名刺の【瑛貴】という名が気になった。
「お名前……なんて読むんですか?」
「えいきだ」
「えいき……えーき……?」
その名前ってまさか……。