エリート御曹司はママになった初恋妻に最愛を注ぎ続ける

 動揺を悟られないよう聞こえなかったフリをして、沈黙を貫いた。

「まぁいい。どちらにしても、これは俺が買わせてもらう」
「えっ? そんな。勝手に決めないでください!」

 突然の横暴な態度に慌てて腰を上げる。

「俺にもこのキッチンを譲れない理由がある」
「理由ってなんですか?」
「知りたいか?」
「もちろんです」

 大きく頷いて、男性を見る。ほっそりした顎に手を添えた彼は、視線を宙を投げてなにか考えるそぶりをした。

「きみはいつまでヘルシンキにいる?」
「三日後の夜まで、ですけど……」
「じゃ、明日の夜時間をくれ。食事をしながら話をしよう」
「食事……?」

 どうしてわざわざ? 今ここで説明してくれれば済むことなのに。

「来てくれたら、あのキッチンを譲らないこともない」

 穏やかに笑って、彼が言う。しかし、提示された交換条件の意図がよくわからない。

 彼のような社会的地位のある男性が平凡な私に興味を持つはずがないので、デートに誘われたわけじゃないだろう。

 それとも実は遊び慣れていて、キッチンを譲る対価としていやらしいことを考えていたりして……?

 考えれば考えるほど警戒心が高まる。

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