エリート御曹司はママになった初恋妻に最愛を注ぎ続ける
期待の滲んだ眼差しに、返事をする前から胸が締め付けられる。でも、言うしかない。
「私も、瑛貴さんに再会できたのはうれしかったです。でも……懐かしい友達に会えた感覚でしかないので、あなたの期待するような関係にはなれません。ごめんなさい」
ひと息にまくし立て、頭を下げる。放置されて冷めた鱒のソテーが目に入ると、なぜかやりきれない思いがした。
「わかった。正直に話してくれてありがとう。いきなり変なことを言ってすまなかった」
「いえ……」
顔を上げ、ようやく目を合わせた瑛貴さんは申し訳なさそうに苦笑していた。
嘘をついたのに『ありがとう』だなんて言われて、うしろめたくなる。
でも、もう二度と会うことのない相手だ。気に病んでも仕方がない。
「デザートを食べ終えたら送るよ。それと、帰る前に日本の住所を教えてくれ。あのキッチンを譲りたい」
「キッチン……いいんですか?」
彼の好意を拒んだのに、キッチンだけ譲ってもらうなんて申し訳ない。
「ああ。きみに持っていてほしい。先に言っておくが、代金は受け取らないよ」
「えっ。またですか? どうして……」