エリート御曹司はママになった初恋妻に最愛を注ぎ続ける
「いい家具に金を払うのは俺の趣味だ。もちろん、人にプレゼントする場合でもね。だから罪悪感を覚える必要はない」
「そう……ですか」
いまいち納得できなかったものの、最終的には私が折れた。
食事の合間に彼のスマホのメモに日本で住んでいるアパートの住所を記し、キッチンが日本に届いたら彼がその住所に送ってくれる手筈になった。
キッチンを譲ってもらえたのは嬉しいし、食事もワインも変わらず美味しい。けれど、どこか取り繕ったような空気が拭えないまま、瑛貴さんと最後のひとときを過ごした。
帰りのタクシーを手配したはいいが、近くで事故があったらしく到着が遅れていた。
待つ間私が空を見たいと言ったので、瑛貴さんとともに店の外に出て頭上を仰ぐ。
「……夜が明るいなんて、不思議」
「神秘的だよな、白夜。北部はもっと明るいが、俺は夜明け前の空に似た、この薄暗い色が好きだ」
午後九時を過ぎた現在も、空の低い位置に太陽が輝いている。
瑛貴さんは夜明け前と言ったけれど、私が連想したのは夕焼け空。群青と薄いオレンジ色が溶け合って美しいグラデーションを作り出している空に、一日の終わりを感じて切なくなったからだ。
瑛貴さんとの不思議な縁も、あと少しで切れてしまう……。