エリート御曹司はママになった初恋妻に最愛を注ぎ続ける

「あさにぃとママ、ないしょばなし?」

 自分の頭上で交わされた会話が気になったのか、胡桃がキョトンとした目で私たちを見る。

 内緒話と言うほどのものではないので笑って否定しようとしたら、麻人さんが胡桃の頭をぐりぐりと撫でて「そうだよ~。胡桃には内緒」と思わせぶりに言った。胡桃の気を引くのが上手な麻人さんらしい。

「え~っ。おしえて、おしえてっ」

 案の定、胡桃は彼の膝の上にのって、ぴょんぴょん跳ねる。麻人さんもニコニコ胡桃の相手をしてくれて微笑ましい限りだが、胡桃の皿を見るとまだ食事が済んでいない。

 食事の途中で遊ばせるのは避けたいので、興奮気味の胡桃の背中をトントン叩き、たしなめる。

「胡桃。まだご飯食べ終わってないんだから、座って」
「もういらなぁい」
「あのね、自分で出した枝豆はちゃんと自分で――」
「それ、後で俺が食べるからいいよ。胡桃、あっちで遊ぶ?」
「あそぶー!」

 ご馳走様も言わずに席を離れる我が子に、ついため息がこぼれた。

 本当はぴしゃりと「ダメ!」と言いたかったが、気を利かせたのであろう麻人さんのことも無下にできず、悶々とテーブルに向き直る。

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