敏腕外科医はかりそめ婚約者をこの手で愛し娶る~お前は誰にも渡さない~
「聖さんも素敵です」
「だろう。惚れなおしたか」
いつものジョークだとわかっているのにうまく切り返せない。これまでだったら〝それは惚れているのが前提です〟とすんなり言葉が出てくるのに。
ふたりを本物の恋人同士だと思っている雪菜がいるため下手な返しができないせいだと自分を言い含めるが、それとはべつに心を乱されているのがわかり動揺する。
目を泳がせていると、聖がニッと口角を上げた。
聖は答えを求めていないようで、「そろそろ行こうか」とソファに置いていた紙袋を持ってきた。中身は着ていた洋服のようで、七緒が抱えていたものもそこに一緒に詰め込む。
「雪菜さん、今日は本当にありがとうございました」
「また改めてお礼するよ」
「おいしいものをご馳走してもらっちゃおうかな」
「任せとけ」
聖が頼もしい言葉で返す。
「お兄様にもよろしくお伝えください」