敏腕外科医はかりそめ婚約者をこの手で愛し娶る~お前は誰にも渡さない~
店を出しているプロの料理人に七緒が敵うわけがない。
(……まぁ私もプロといえばプロなのかもしれないけど)
お腹を押さえながら地上に出ると、空は薄紫色に変わりつつあった。梅雨の時期まであともう少し。陽が延びていく季節だから日没までまだある。
「七緒はなにかしたいことある?」
「うーん、そうですね……。じゃあ街をぶらぶら歩きたい」
「歩くだけ?」
「はい。せっかくおしゃれしたので車に乗ってどこかへ行くんじゃなくて、この格好で歩きたいです」
プロにヘアメイクしてもらう機会なんてそうそうないから、めいっぱいこのスタイルを満喫したい。
「なるほど。自分の美しさをみんなにアピールしたいってわけか」
「そうは言っていません」
なぜそうなるのか。
「謙遜するな」
「や、だから違うと――ひゃっ」