敏腕外科医はかりそめ婚約者をこの手で愛し娶る~お前は誰にも渡さない~
もう時すでに遅しだと思うと余計におかしくなってくる。
ぴょんぴょんとジャンプしながら走り、広い噴水から出たときにはふたり揃って洋服から水が滴っていた。
「ずぶ濡れだな」
「ゲリラ豪雨にでも遭遇したみたい」
ふと周りを見たら、立て看板に〝一時間に一度、ブルータイルの一帯から水が噴き出します。ご注意ください〟と注意書きがあった。
「あんなの気づきませんよね」
「まったくだ」
顔を見合わせて笑い合う。夏が近い時期で助かった。これが秋や冬だったら即座に風邪コースだ。
「聖さん、髪がぐちゃぐちゃ」
「七緒もな」
そっと伸ばした聖の手が七緒の髪に触れる。そのまま頬に移動させ、ふと真顔になった。
濡れた瞳で見つめ合い、まばたきもできない。ふたりだけの世界に一気に没入していく。
どちらからともなく引き寄せられるようにして――。