敏腕外科医はかりそめ婚約者をこの手で愛し娶る~お前は誰にも渡さない~
唯斗がテーブルに額をつけるほど頭を下げる。
「もういいから。頭、上げて」
顔を上げた唯斗と目が合う。
(やっぱり少しやつれた感じ。恵麻ちゃんとのことでいろいろ悩んだんだろうな)
婚約披露パーティーまで開いておきながら婚約も結婚もしないなんて、恵麻は人の心をなんだと思っているのだろう。それもほんの十日前の話なのに。
「じゃ、これから仕事があるから」
「うん、わかった」
同時に立ち上がり、一緒にコーヒーショップを出る。七緒は左方向、唯斗は右方向、ここでお別れだ。
「七緒」
名前を呼ばれて顔を上げた。
唯斗の眼差しが、付き合っていた頃のものと重なる。七緒は、この優しい眼差しに惹かれていた。
「どうしたの?」
「……いや、幸せか?」